地域を守るのは相互のつながり。
互いを知ることが、頼り合いをうむ。

これまでになかった「社会安全・警察学」が、地域のつながりを緊密にする

地域に広がる様々な団体や組織。そのつながりが犯罪抑止力となる

お互いを知ること。それが、つながりを深める

これまでになかった研究所が、これまで以上のつながりをうむ

日本初の「社会安全・警察学研究所」がうみだす、「地域の緊密な防犯組織」

地域社会のつながりが、犯罪抑止力をうむ

平成という時代は、地域の大切さがクローズアップされるとともに、地域において「事件」が身近になった時代であったともいえる。実はこの双方の事象は密接にむすびついている。元々日本の地域社会はつながりが強く、高い犯罪抑止力を持っていた。また、世界語にもなった「KOBAN」に代表されるように、日本の警察は交番や駐在所といった細やかなネットワークを地域に張り巡らせ、犯罪抑止力の維持に効果を上げてきた。
しかし、平成の前半には刑法犯や凶悪犯、侵入窃盗の件数が上昇を続け、平成14(2002)年・15(2003)年頃にはピークを迎える。これは、相互無関心による監視力の減少や規範の力が低下したことも大きな要因のひとつだといわれている。かつては強固であった地域社会のつながりが薄れ、伝統的な社会の犯罪抑止力が減退したといえるのだ。

そこで、平成15年以降には政府をあげて犯罪抑止の取り組みが開始され、公的統制力の強化(警察など)と、民間の防犯ボランティア団体の組織化・活動の支援が進められている。その成果もあり、その後は犯罪件数は再び減少を続けている。しかし、地域には様々な要素や組織があり、それらが緊密につながり合ってこそ健全な犯罪抑止力は発揮されるだろう。警察、裁判所、地方自治体、児童相談所、小中学校といった公共セクターや、大学・学会、また、NPO、ボランティア、企業、町内会といったコミュニティ・セクターまで、つながりの対象は実に幅広い。そうした知見をもとに2013年、京都産業大学に創設されたのが「社会安全・警察学研究所」。「警察学」の名を冠した日本で初めての研究所である。

京都産業大学「社会安全・警察学研究所」の研究領域。つながりをうみだす

地域にうまれる新たな関係性。深まり、広がっていく「安全」

「警察は社会安全の重要な担い手であると同時に、他の組織以上に適正な統制が強く求められます。過剰な介入を排し、かつ必要な介入を確保することは、市民の強い要望です。 日本では、警察に関する学問的な研究の蓄積に乏しく、それだけ研究の必要性は高いものがあります。」
と語るのは、社会安全・警察学研究所 所長の田村正博教授である。警察官僚として36年間勤務し、警察という組織の理想論も現実問題も熟知している稀有な存在だ。警察庁総務課企画官、内閣情報調査室国内部主幹など中央組織の幹部を歴任するとともに、秋田県や福岡県の警察本部長を務め地域防犯にも携わってきた。さらに現在は弁護士としても活躍。中から外から…と様々な角度から警察組織に向き合い、見つめてきた。

こうした所長のもと、様々な経歴や専門を持つ研究員が集い、警察、地域の双方について調査研究を進めてきた同研究所。2015年には国立研究開発法人科学技術振興機構から大型の資金を得て、その後4年間にわたることとなる長期プロジェクト「親密圏内事案への警察の介入過程の見える化による多機関連携の推進」を開始。その成果は多岐にわたっており、例えば『児童福祉に携わるひとのための「警察が分かる」ハンドブック』もそのひとつ。研究成果を分かりやすく伝えることによって、地域防犯力の向上を目指している。このプロジェクトの研究においては、所長の経歴も生かし、警察大学校や7つの都道府県警察の協力を得て、日本初となる警察介入の実態調査を実施。自治体の諸組織に、警察についての研究成果を伝えることで、地域のコミュニティとの協働の一助としている。

警察は捜査を行う強力な組織であるだけに、その力を濫用しないように、強制力を行使するには法律で高いハードルが設けられている。そのため「児童虐待の疑いあり」となっても、ある程度の「証拠状況」がなければ動けないというジレンマを抱えている。こうしたジレンマが、「警察が勝手に捜査権を振りかざせない」という民間を守ることにつながると同時に、逆に「捜査してほしいのに、何かが起こるまで動いてもらえないのでは」という不満や不安につながることもある。特に児童虐待においては証拠収集の困難性が重大な問題となっていることも浮き彫りになってきた。「民間はこういうことに困っている」「警察は、こういうことがあれば動けるのに…」といった情報が双方に見えてくれば、より「頼り頼られ」といった関係が深まっていくだろう。社会安全・警察学研究所はその間をむすぶ役割を果たしているのだといえる。

田村所長は警察時代に警察学校の教科書を執筆し、警察大学校長も務めた。現在でも警察大学校の常任講師として現役の幹部警察官に指導を行っている。地域の人々に警察の実態や活用法を伝え、一方警察には地域の人々の実情を伝えることで、関係はこれまで以上に深まっていくだろう。ちなみに京都産業大学は2017年、韓国国立警察大学と交流協定を締結。同大学の「治安政策研究所」と社会安全・警察学研究所との研究交流も始まっている。関係は地域を超え、さらに世界へ。グローバル化の中、犯罪の拡大も懸念されているが、一方「防犯」のつながりも広がりを続けている。

2017年には韓国国立警察大学と交流協定を締結。右から2番目が田村所長

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