シェアリング・エコノミーを学内に。
運び・運ばれの学内生態系

日本の大学初! Uber Eatsを大学キャンパス内に試験導入。学生が配達員になり、ユーザーにもなる

広大な大学のキャンパスを舞台にした、Uber Eatsの試験運用

意外に多い「学生の空き時間」。シェアすることで互いの時間を有効活用

新たな動き、つながりの創造も

学内空き時間という「資産のシェア」。キャンパスが新たな経済モデルになる

シェアが世界をつなげていく

「このパフェ、一人じゃ食べきれないからシェアしよっか」
「ルームシェア始めたんだ」
「あの記事のシェア、もう見た?」

もはや「シェア」という言葉は日常用語になっている。冒頭の、食べ物シェアの例でいえばかつての「半分こ」。元々私たちは近しい人間関係の中で「シェア」を行ってきた。誰かが忙しそうなら手の空いている自分が手伝い、逆に自分が忙しくて外出できないときは「親の買い物のついでにおつかいを」頼むこともある。それが近年劇的に変わったのは「シェアの規模」だ。どこにでも持ち歩けるモバイル機器、いつでもつながる通信環境、そしてアプリに代表される「知らない他者同士」をつなげる仕組みが、それを可能にした。いわば世界中の全員を「知り合い」にする仕組みのおかげで、私たちは出会ったことのない誰かとつながり、知らないうちに助け合っている。

ツイッターで得られるライブな情報も誰かのシェアのおかげ。メルカリでお気に入りの服を見つけられるのも誰かが不要になった服をシェアしてくれるおかげ。海外観光客向けで話題の「民泊」も余った部屋をシェアしてくれるご家庭のおかげ。私たちはいま、無意識のうちかもしれないが、お互いの余った何かを差し出しながら、助け合いながら生きているのだともいえるだろう。

こうしたシェアによる新しい経済概念「シェアリング・エコノミー」の新たな形として2009年にアメリカで誕生した「Uber」は、自動車による移動をシェアするという仕組みであった。スマートフォン上のアプリで現在地を登録すれば、近くを走っている登録ドライバーが駆けつけてくれるというつながりの創造だ。これも個人の余った時間を有効に生かす画期的な仕組みといえる。(なお、日本ではタクシー会社と連携し配車サービスを提供している。)このUberのフードデリバリーサービスとして誕生したのが「Uber Eats」。出前と違うのは、飲食店のスタッフが配達に行くのではなく、飲食店の近くにいる一般人が配達を代行するというもの。もちろん配達員としての登録は必要だが、登録配達員が増えれば増えるほど「飲食店の近くに誰かがいる」という状況ができ、迅速な配達が可能になる。日本では2016年から東京都でサービスを開始。現在では関東各都市、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡など10都市以上にサービスエリアが拡大されている。

Uber Eatsの学内版。空き時間の学生が運び、忙しい学生・教職員に届ける

時間のシェアが、キャンパス内につながりをうむ

そして2019年。京都市内にある京都産業大学で「学内完結型Uber Eats」の試験運用がスタート。学生が配達員になり、キャンパス内の学食から研究室や教室へ食べ物を届けるというものだ。学内での運用も、学生食堂がUber Eatsサービスを提供することも国内初であるという。大学のキャンパスは一つの街のように広大だ。しかもこの大学の場合、各地分散型キャンパスが一般的な最近では珍しい「一拠点総合大学」を貫き、全10学部の学舎や天文台が立ち並ぶ中、文系・理系合わせて約14,000名がひとつのキャンパスで交流し合いながら学んでいる。9つの学食があちこちに点在しているとはいえ、実験や議論となると、一分一秒が惜しいこともある。そこで「学内完結型Uber Eats」の出番だ。

余談ではあるが、諸大学の学生にアンケートをとったところ、「授業の空き時間を過ごす場所」の上位に決まってあがるのが学食である。登録した学生配達員たちのスマートフォンアプリに「配達依頼!」の通知が届くと、その場や近くにいる学生配達員が希望の場所へと配達する。配達先は、教室やゼミ室といった学習関連の場に加え、クラブ活動を行う課外活動棟や体育館など、広大なキャンパスの各所に及ぶ。まさに「余った誰かの時間」を「忙しい誰かのために」シェアする仕組みだといえるだろう。

それだけではない。食堂の混雑緩和といった「場のシェア」もうまれる。また、自分に関係のない学部や部活に足を運ぶことはそう頻繁ではないが、これにより「人の動きの撹拌(かくはん)」が行われ、異分野交流も一層盛んになる。「学究都市」ともいえる一拠点総合大学の魅力もさらに高まるだろう。

互いの時間をシェアしながら、交流し合いながら学んでいく。京都産業大学ではこうした日常的な環境革新に加え、シェアリング・エコノミーに関する講演を実施するなど教育面からも推進していくという。「シェア」のメリットや仕組みを身近に体験しながら学ぶことにより、この学究都市からさらに新たなシェアのアイデアがうまれるかもしれない。

キャンパスをひとつの都市として捉え、新たなシェアの生態系がうまれる

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