祝・令和元年。そこから
見えてくる「法」の人間らしさ

改元の仕組みとは? 元号1374年間の歴史から見えてくるもの

元号は天皇一代につき一つ。でも昔はそうではなかった

改元にもさまざまな苦労がある。それを変えた法律がある

法律を考えることは、いまを主体的に生きること

法律はルール。時代に合わせて変わっていく。私たちが変えていく

元号制定に込められた思いと、“ルール変更”に込められた思い

2019年5月1日。時代が平成から令和に切り替わった。天皇の代替わりによるものであるが、明治時代までは関係のない改元もあった。「一世一元」は、元号制の長い歴史の中では“つい最近”始められた制度なのである。明治天皇の先代となる孝明天皇の場合は、わずか20年余の在位期間に、6回もの改元が行われた。645年の大化の改新で初めて元号が日本に導入されて以来、現在まで1374年間。歴代の元号は令和を含め248。平均すると、なんと約5年半に1回、改元が行われてきたことになる。

改元の理由はさまざまだが、大きな理由のひとつは吉兆によるもの。珍しい白キジが天皇に献上されたのを祝した「白雉(はくち)」。黄金が献上された年には「大宝」へ。体を癒やす泉が見つかると「養老」と改元された。また、災害や飢饉など、「良くない状況を改める」願いを込めて改元された例も多い。江戸時代の「明和9年」には大火災や水害が続いたこともあり、「めいわく」と読めるからだと改元された、嘘のような本当の話も残っている。元号にはその時々の人々の、実に人間らしい想いが込められてきたのである。

ただ、改元にはそれに伴う綿密な議論や準備、改元後の祝事など、非常に多岐にわたる業務が伴うことも事実である。今回の改元における報道で、その大変さを目の当たりにした人も少なくないだろう。江戸時代半ばにはすでにその問題を指摘する学者もいた。明治天皇の即位後、改元に先立ち、後の明治の元勲、岩倉具視が「元号を天皇一代につき一つとし、改元のたびの会議を行わないようにしませんか」という意見書を提出したという話が伝わっている。元号が明治に変わると、その後出された行政官布告で、今後は「一世一元」を踏襲するということが定められた。天皇一代につき、元号はただ一つ。明治、大正、昭和、平成。現在の令和に続く一世一元の系譜は、こうした「人の想い」から始まった。

「令和」を含め248の元号が日本にうまれ、時代を動かしてきた

法律の成立過程を知ることは、世の中を変えていく可能性を知るということ

とはいえ、「明治以前」が法的根拠なく元号が定められてきたわけではない。京都産業大学で法制史を研究している久禮旦雄准教授によると、元号は古代より制度化されてきた。大化の改新の約50年後に定められた有名な「大宝律令」で元号を用いることは明文化され、そのルールが以降、形を変えつつも受け継がれている。しかし実は意外と近年において、元号が法的根拠を失いかけた時代もあるのだという。太平洋戦争の敗戦後、GHQ(連合国軍総司令部)の統治下に置かれた日本では、旧皇室典範などが廃止され、新皇室典範には元号に関する規定はなかった。そのため、明治改元の際に出された行政官布告などが現行の昭和元号の法的根拠とされた。このままでは、当時の昭和天皇が万が一崩御されたときに、次の元号を制定することができなくなるかもしれないという危惧もあり、さまざまな議論はあったものの、元号の法制化に向けての動きが盛り上がり、ようやく戦後34年を経た昭和54年に元号法が成立した。幸い、その後も昭和天皇は長命を保たれ、「昭和」は日本で歴代最長となる昭和64年まで続く。そして次の「平成」へと無事受け継がれた。

その後、平成の天皇による「お言葉」を機に、皇室典範特例法が設けられたことはよく知られている。人間の意志や希望が状況を動かし、一代限りとはいえ「譲位」が法的に認められた。それは結果的に、新元号の発表から、退位の礼・即位の礼を国民的イベントとして、奉祝の雰囲気の中で行うことを可能としたのである。

法律は、与えられたものでもなく、不変のものでもない。それぞれの時代を生きる人々の想いや、政治・社会・経済などの諸条件に適したルールを定めたものであるとするならば、いまを生きる我々もまた、新たなルールをつくり出すことができる。法を考えるとは、いまを主体的に生きるということでもあるのだ。

江戸時代の年号定の様子を記した議事録(個人蔵)

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