彗星の飛来を待ち構えろ!
彗星、観測大作戦。

神山天文台の研究チームが参加するコメット・インターセプター彗星探査計画

「10万年に1回」など彗星を観測するチャンスはまさに一期一会

こうした周期の長い彗星ほど、原始を知るヒントにあふれている

宇宙空間で待ち受けよう。接近が分かってからでは間に合わない

宇宙空間で待ち伏せて、彗星が近づくとその彗星の軌道へ。一期一会の彗星観測

彗星を、待ってばかりじゃいられない

古来、彗星は人類にとって不思議な存在であった。日々見上げていた星空に、ある夜突然あらわれる彗星。吉兆か、不吉の象徴か? 古代から、近代に至るまで人々はその異様な美しさに一喜一憂していた。ハレー彗星はその代表的な存在だ。この星が夜空に現れるたび、人々は大騒ぎしていた。今でこそ、こうした彗星のふるまいは、太陽のまわりを楕円を描いて「公転」することによる周期的なものだと分かっているが、それでも人々はロマンに酔いしれる。公転周期が約75年のハレー彗星なら一生に一度見られるかどうか。1000年、10万年、さらには1000万年に一度という彗星もたくさんいるのだ。

科学者たちにとっては、この事実は単にロマンを超えた、まさに「千載一遇」のチャンスである。彗星の観測から得られる情報は非常に貴重。公転周期が長ければ長いほど、太陽光で加熱されたことのない、太陽系誕生の頃の物質について情報が得られる可能性がある。太陽光加熱で変性してない始原的な太陽系小天体の表面形状の計測、彗星核から放出される揮発性分子やダストの3次元構造の観測などを行えば、太陽系形成の謎に迫ることができるともいわれている。

1608年に望遠鏡が発明されると、肉眼では見えないような暗い彗星を発見することができるようになり、「コメットハンター」と呼ばれる天文家が数々現れた。やがてロケットが発明されると、人類は物理的に彗星に迫ろうとしだした。1986年のハレー彗星再接近の折には、数年前から世界各国・国際宇宙機関が次々と探査機を送り出し、ハレー彗星に迫った。そのさまは「ハレー艦隊」とも呼ばれ、数々の発見が報告された。だが、彗星はこのように周期的に予測できるものばかりではない。公転周期が非常に長い長周期彗星や、2017年に太陽へ最接近した恒星間天体「オウムアムア」のように一度きりで太陽系を去ってしまう希少な天体も見つかっている。いくら科学が進歩しようとも、「見つかってから準備をする」やり方では間に合わないのだ。

コメット・インターセプター計画のコンセプト画像(欧州宇宙機関 提供)

待ち伏せ型コンセプトで、まだ見ぬ彗星をとらえる

こうした根源的な課題が持ち上がるなか、欧州・日本・米国の彗星研究者を中心とする国際研究チームが計画中の彗星探査計画「コメット・インターセプター(Comet Interceptor)」が、2019年6月19日に欧州宇宙機関の新しいFクラス探査計画に選ばれた。FクラスのFとは「Fast」、すなわち「短期間」という意味で、比較的低い予算ではあるものの、計画立案から打ち上げまでをスピーディーに行うものである。今回承認された計画の場合、2018年に計画の検討が開始され、2019年に審査結果が発表、この9年後の2028年には探査機が打ち上げられる。もう間もなくだ。

これまで太陽系小天体の観測的研究を行ってきた京都産業大学 神山天文台の新中善晴嘱託職員も、天文台長の河北秀世と共にこの国際研究チームの一員であり、計画推進に向けて研究をさらに推し進めている。このコメット・インターセプターは直訳すると「彗星迎撃機」。採用した欧州宇宙機関によると、3機の探査機で構成し、遠くの恒星を周回する惑星の大気を研究するための大型宇宙望遠鏡「アリエル(Ariel)」とともに打ち上げる計画だという。

コメット・インターセプターは打ち上げの後、地球から約150万kmも離れた「ラグランジュ点」に待機することになる。太陽と地球の重力でつり合いが取れる地点である。ここで待機する探査機は観測に適した彗星が見つかると、このラグランジュ点を離れ、その彗星に接近する軌道へと移動する。彗星に接近する直前に親機から2機の子機を分離し、3機が彗星を取り囲むように移動することで立体的に観測することが可能になるのだ。

古来、人が神秘の対象として眺めてきた彗星。SFのロマンとして描かれてきた宇宙大作戦。謎を解明したいという人類の意志が、アイデアと技術を進化させた。ロマンはいまから9年後、現実のものになろうとしている。

コメット・インターセプターのTwitterアカウントで公開された画像

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