体育会所属学生が理想の将来像を
自らの力で切り開く!

体育会所属学生の潜在的な強みを顕在化する「アスリートインターンシップ」

意外となかった「体育会所属学生向け」キャリアサポート

取り組みサイクルや判断力。実は既に備わっている「即戦力」

インターンシップ先は10社以上。様々な働き方や業種を選べる

自己マネジメント力や判断力など、自らが育んだ能力に気付き、社会で生かす

インターンシップの進化と、約半世紀前の“想い”

日本におけるインターンシップは、1990年代後半から浸透しはじめたとも言われている。それから20年あまりが経ち、文系や理系に特化したインターンシップや、数カ月間に及ぶ長期型インターンシップ、海外でのインターンシップなど、インターンシップはさまざまな形で進化を続けてきた。だが、意外とこれまで見受けられなかったものが、「体育会所属学生に特化したインターンシップ」ではないだろうか。考えてみれば、大学で「体育会」とよばれる本格的なスポーツ系クラブに所属する学生は非常に多い。しかしながら、大学卒業後にスポーツ選手として活動する体育会所属学生は一握りで、多くの場合、一般の学生と同じく就職する。

このような状況にありながら、各大学では彼らに適した形のキャリアサポートができているのだろうか? そこに一石を投じたのが、京都産業大学による体育会所属学生向けの「アスリートインターンシップ」である。

元々、京都産業大学はスポーツが非常に盛んな大学であるが、それは創設者である荒木俊馬の思想に基づいている。かつてアインシュタインにも直接教えを受け、世界的な天文学者・物理学者として活躍した荒木には、「将来の社会を担って立つ人材の育成」という夢があった。それが、一個人をして新たな大学を開設するという大事業につながるのだが、それを成し遂げた荒木は当時の大学名としては非常に珍しかった「産業」の2文字を大学名に加えた。世の中から乖離した学問ではなく、学びを産業、社会に生かすことこそ本分と考えたことによるものだ。そんな荒木が記した「京都産業大学体育会活動目的」にはこう書かれている。

「本学でスポーツを奨励し、できうる限りの援助を与えている所以(ゆえん)のものは、スポーツが学習研究とならんで、車の両輪、鳥の両翼の如く、心身鍛錬の人間形成に大きな役割を果たすものであるからであって…」この脳裏には、イギリスの名門大学ケンブリッジやオックスフォードのスポーツ選手が学業においても優秀な成績を挙げ、卒業後に社会の各所で活躍していることがあった。まさに、競技場の中だけではない「真のスポーツマンシップ」を育てようとしたのである。

彼の志が受け継がれたかのように、約半世紀を経て誕生した「アスリートインターンシップ」は、単に就職を有利に運ばせようとするものではない。「体育会所属学生たちが自ら鍛えてきた能力に気付く」こと、その能力を競技だけでなく、学業や実社会等のいかなる局面において「どう生かせるのかを考える」ことに主眼を置いているのだ。

例えば野球。そこで培われる「社会で活躍できる力」とは…

既に培われている「能力」に気付き、磨くという実践体験

京都産業大学の体育会所属学生は2018年度末時点で1,677人。全学生数の10%以上に及ぶ。この教育プログラムは、2018年度に49クラブのうち、まずは6クラブを対象に実施したことを皮切りに、2019年度に全クラブへ拡大。2020年度からは正課科目として開講することが決まっている。中でも注目すべきは、実際に約5日間のインターンシップに行く前に行われる、16時間もの事前学習である。

京都産業大学は、スポーツが個人競技・団体競技を問わず、社会で活躍するための多彩な能力を磨くものである、と考えている。例えば、理想のパフォーマンス発揮に向けた自己成長プロセスである。アスリートは常に「目標に向けた取り組みサイクル」を繰り返している。誰にも通じる正解やノウハウはない。いまの自分やチームの状況・課題を客観的に把握し、仮説を立て、トレーニングを行う。その結果を踏まえて仮説をブラッシュアップし、理想のパフォーマンスを実現させていくのだ。これはまさに、企業をはじめとした社会の各所で行われている課題解決のプロセスそのものである。

また、スポーツにおいては瞬時の判断が常に求められる。自分の状況、仲間の状況、相手の状況、さらには風向きやフィールドの状態など自然環境も把握し、それら全てを総合的に判断した上で「たった一つの」プレーを選択する。これもまた企業活動そのものだといえるだろう。

全16時間の事前学習では、「実は既に自分がそれらの能力を培っている」ことに気付かせることを主眼に置いている。さらに、それを言語化することで確かな力、スポーツ以外にも応用できる力へと高める。所属クラブの枠を超えた、他クラブの学生とのグループワークもその一助となる。対話し、共有し、気付くことで互いを高め合うのだ。事前学習の後半では、こうして自覚した能力を生かし、実際のビジネス事例をケーススタディとして課題解決に取り組む。

このような十分な準備をもとに、受講生たちはそれぞれのインターンシップ先に赴き、実社会の課題の解決に向けて約5日間向き合うこととなる。さらに事後学習には全6時間もの時間を割き、実体験で得た実感をさらに精緻に言語化し、自己の把握や進路選択に生かしていく。

ちなみに、このプログラムを受講できるのは3年次生に限らない。2年次生でも受講でき、早期から自らのキャリア意識の向上に努めることができる。元々、体育会所属学生の強みとして広く社会で認知されてきた「コミュニケーション能力」に加えて、「判断力」や「解決力」といった強みが顕在化していくのだ。体育会所属学生に対する社会からのニーズはこれまで以上に強く、ますます多様になるだろう。そして、学生たち本人もそうした本来備わっていた能力に気付き、自覚的に社会へ生かしていく。社会と学生が相互に引き起こす発見と変化は、未来を今以上に面白いものにしてくれるはずだ。

ラグビー、陸上競技、空手道…さまざまな競技で培われる能力を未来へ生かす

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