「宅配ボックスのキャンパス実験」
から見えてくる、大学の新たな可能性

産学公連携で宅配ボックス実証実験を実施!再配達率が43%から15%に減少

京都市-パナソニック-大学が未来に向けてタッグを組んだ

大学まるごと実験場、という可能性

キャンパスは、未来実験のための「モデル都市」だ

学び、実践、そして「体現」。次世代を探る「実験型モデル都市」の可能性

再配達の課題に、「みやこ」が乗り出した

宅配便の再配達増加に伴う物流の増大は、配達員の労働問題という「ライフスタイルの問題」のみならず、CO2排出量の増加などの「環境問題」や道路の渋滞などの「交通問題」にまで影響してくる。こうした社会課題の解決のためにはさまざまな実験・検証が必要だが、どのように「次世代モデル」を創っていくべきなのだろうか?Webの世界では「ABテスト」など、異なる複数のサイトをつくって比較実験をするという取組が、ユーザーである私たちの知らないバックグラウンドで行われている。その検証結果をもとに「よりコミュニケーション力の高い」サイトやサービス制作が行われているわけだ。例えばAmazonのサービスでも、そうしたトライアル&エラーが日々行われ、進化を続けている。では、「ハード」の部分ではどうだろう? その問いのひとつを指し示すのが、2017年11月から2018年1月にかけて約3カ月間行われた宅配ボックスの実証実験である。主催は「京(みやこ)の再配達を減らそうプロジェクト」を推進する京都市。ハードやシステムを提供したのはパナソニック株式会社。そして実験環境を提供したのは、京都市内に立地する京都産業大学。いわゆる産学公連携により、この実験はスタートした。パナソニック製のアパート用宅配ボックス『COMBO-Maison(コンボ-メゾン)』合計39台を京都市内5カ所のアパート(合計106世帯)に設置するとともに、京都産業大学キャンパス内にも公共用の宅配ボックスを設置。そこに宅配事業者が連携し、再配達率の変化とそれに基づく宅配事業者の業務時間やCO2排出量の削減、受け取る利用者の心理的変化など、多岐にわたる社会的要素を計測していった。

キャンパスに設置された宅配ボックス。

キャンパスに生まれつつある、新たな社会的価値

結果、再配達率は約3分の1に減少。CO2排出量の削減や宅配事業者の業務時間削減につながるという定量データも得られた。パナソニックではこのデータを活用し、もう一回り大きい収納サイズの宅配ボックスを4月に発売。既に具体的改善へと生かされている。また、学生や教職員をエンドユーザーとした全国的にも珍しい実験により、「受け取り側のストレスが9割改善された」といった定量的なデータに加え、「一人暮らしだと入浴や睡眠も制限される」といった定性的なフィードバックが多数得られたことも大きい。ユニークなものでは、「子どもへのクリスマスプレゼントを内緒で受け取りたい」と大学内の宅配ボックスを活用したという教職員の意見もあった(なお、この“サンタ”はその夜、無事にミッションを遂行)。この実験は、物流の未来だけでなく、大学・社会の未来についても示唆に富むものとなっている。京都産業大学は学生数約1万3千人。そこには約220人の海外留学生、約880人の教職員も加えられる。世界各地から多種多様な人材が集まったキャンパスという「モデル都市」で社会実験が行われることは、学生のみならず社会にとっても価値のあることだといえるだろう。京都産業大学は宅配ボックス以外にも、さまざまな次世代モデルの体現に積極的に取り組んでおり、高低差のある施設間を誰もが行き来できるようなエスカレーター網の整備や、母国語に関係なく情報が伝わるピクトグラムなどのユニバーサルデザインの工夫など最新のバリアフリー環境が日々整備され続けている。研究者としての学習や実験の場としてだけでなく「生活者・被験者としての」実験の場に各地の大学が進化していけば、これまで以上に多くの「未来の理想像」が描かれ、試され、進化していくことができる。その可能性は、今回の社会実験が見せてくれたもうひとつの成果であろう。

キャンパス全域で進化を続ける京都産業大学。

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