遠く離れた銀河のサインをつかめ。
宇宙の地図を、もっと詳しくより広く

爆発を繰り返す天体「回帰新星」に迫る!

「天の川銀河」内の地球と、「アンドロメダ銀河」の距離とは

回帰新星の爆発は、遠い銀河からのサイン

爆発周期の乱れが教えてくれるもの

モノサシの精度を高めるたび、宇宙はもっと広がっていく

地上から空へ、地球から太陽系へ、銀河へ…広がってきた「人類の空間」

古来、人類が把握する空間は非常に小さいものだった。地球は平面で、水平線の果ては滝となっているという迷信も、14世紀の大航海時代まで信じていた船乗りがいたという。夜空に浮かぶ星々すら、空を覆う球面に張り付いているという考えもかつては流布していた。やがて「地“球”」だと分かり、空間の概念は大きく広がる。望遠鏡が発明され、宇宙の観察が発展していくにつれ、「星空」は、太陽系という概念へ、より大きな銀河系へ。さらには自分たちの銀河の外にもまた別の銀河があり…と、人類の空間概念は観察とともに大きく変革を遂げてきた。では、その距離はどう測っているのだろう? 同じ銀河系内の近くの星であれば、地球上と同様、三角測量の原理を用いて測定することができる。ただ、銀河系の外までとなると考え方の次元が変わる。例えば、私たちが暮らす天の川銀河の近傍、アンドロメダ銀河内の星となると別の方法で推定するしかない。それが「光の変化」の差異を活用する方法であり、Ia型超新星とよばれる「星そのものが吹き飛ぶほどの大爆発を起こし、劇的に輝きを増す」星が、そのために欠かせない光源とされている。

新星爆発の想像図(©NASA)

星の爆発が、宇宙の謎を照らし出す

だがそのIa型超新星とは、いわば「星の死」ともいえる現象。見逃してしまえば後がない。そのため、事前に目星をつけて観測し続けることが求められる。ではその予兆とは? それが、回帰新星とよばれる前段階である。この回帰新星は、隣の伴星からガスが流れ込んでいくことにより、それがある程度溜まると爆発を引き起こす。しばらくは落ち着くが、また伴星からのガス流量が溜まると爆発を繰り返すのである。しかし爆発でガスが全て吹き飛ぶわけではなく少量は残存。次第に蓄積されていき、回帰新星は次第に自らの質量を増していく。その質量が限界に達すると、星自身を吹き飛ばしてしまうほどの大爆発、すなわち「la型超新星」となる。
さて、私たちの銀河の近傍、アンドロメダ銀河に、「M31N 2008-12a」という回帰新星がある。幸いにして、この星がなんと「約1年に1回」という定期性を持っていることが分かったのは数年前のこと。宇宙単位の時間は人間の一生を遥かに超えており、「一生に1回」見ることができるかどうかという回帰新星もざらであるなか、非常に貴重な存在とされていた。しかしある年、異変が起こる。予測を大きくはずれ、約3カ月遅れの爆発となったのである。2018年に、米国天文学会の学術論文雑誌 Astrophysical Journalに掲載された論文※ではこの観察結果が詳細に語られた。どうやら「ガスの流量がいつもよりゆっくりしており、それで周期が乱れた」こと。その分「より多くのガスを吹き飛ばし普段より明るくなった」ことなどが報告されている。普段の生活の中でなら「定期的でない」のは好ましいことではない。だが自然現象においては「期待を裏切る現象」から、また新たな発見がうまれる。回帰新星と伴星の関係性がより詳しく見えてくれば、予測の精度も増し、さらなるla型超新星発見への可能性も高まるであろう。人類は、観察と分析を繰り返しながら、自分たちの「空間」を押し広げてきた。思いもよらぬ自然の裏切りを糧に、さらに宇宙は広がっていく。

※"Breaking the Habit: The Peculiar 2016 Eruption of the Unique Recurrent Nova M31N 2008-12a"
M. Henze et al. 2018 Astrophysical Journal, 57, 68

注目の回帰新星があるアンドロメダ銀河(©NASA)

シェアする

関連する学び

あわせて読みたい記事

国境

トランプ移民政策に揺れる 国境、人々の声を聞いた 「もし子供と引き離されたら…それでもリスクを冒すしか選択肢がないのです」 NATIONAL GEOGRAPHIC

環境

地球の最低気温を更新、 -94℃、南極の高地 「ほとんど別の惑星」と科学者、衛星からの観測データを解析 NATIONAL GEOGRAPHIC

生命

アルツハイマー病、パーキンソン病…。 難病克服の鍵が「核」の中に見えてきた。 世界初!核内の分解標的タンパク質を核外に運び出すメカニズムが解明された 京都産業大学
記事一覧に戻る