20年後も、50年後も。
持続可能な全国防犯サイクルとは

警察・行政と連携する、日本初の学生の地域防犯パトロール隊、16年目の夏

高齢者は地域安全の人的インフラ? 進む高齢化が落とす影

大学という地域の器に流入し続ける全国からの若者が、後継者に

卒業後は再び全国へ。防犯ノウハウも共に普及されていく

防犯とは人々をつなぐ高度なシステム。それらが培われていく場所がある

地域は変わる。でも大学はそこにあり続ける

「さようなら!気をつけてね」
と、帰宅する小学生たちに挨拶を交わすのは緑のおばさんでもベテランのおじいちゃんでもなく、若いお兄さん、お姉さん。京都市北区、世界遺産でもある上賀茂神社が1000年以上前から鎮座するこの伝統の地に見られるようになった新しい風景である。この地に日本初の学生による地域防犯パトロール隊がうまれたのはいまから16年前。上賀茂神社の近くに位置する京都産業大学の学生たちが創設し、現在では京都府北警察署から防犯推進委員の委嘱も受けた、地域の公的な存在にもなっている。
近年、日本の各地において見守りをはじめとした防犯の重要性が盛んに叫ばれている。一方で、そうした見守りの一翼を担ってきた人々の高齢化が進んでいるのも実情だ。地域安全の人的インフラ不足が、日本全国を覆いつつあるのだ。しかし、大学という場所には毎年全国から「新たな若者」が流入し続けている。学生一人ひとりの「住民としての滞在期間」が4年程度だとしても、「パトロール隊」という器には潤沢に人的リソースが循環し続けるのである。このパトロール隊は現在、見守りだけでなく、小学生への防犯意識の啓発活動も行っているという。「いかのおすし」をご存知だろうか? これは、「いかない、のらない、おおきなこえをだす、すぐにげる、しらせる」の頭文字をとったもので、小学生に自分の身の安全を守るための覚えやすい標語として警視庁と東京都が考案したもの。パトロール隊のメンバーたちは警察との連携により、こうした意識啓発の活動にも努めている。

学生地域安全推進隊サギタリウスチームによる見守り風景。既に日常の風景だ

20年、50年後の日本を支える人的インフラ・ステーション

こうした活動は現在ではいくつかの地域や大学でも行われるようになっている。しかし、大学を拠点とした「器」が貢献するのは「いま」「そこ」だけではない。防犯とは、一過性の善意だけでは成り立たないシステムであり、そこには高度なマネジメント能力やコミュニケーションスキルが求められる。学生たちは単なるボランティアとしてではなく、4年間のリアルな活動を通じてそれらを学んでいく。卒業した彼らが全国に散っていき、そして…。大学の防犯パトロールとは、日本の各地に「防犯リーダー」を供給していく人材養成所でもあるのだ。 京都産業大学の学生たちが16年間、先輩から後輩へと語り継ぎ、蓄積してきたノウハウは公的機関や地域からも注目されている。2017年には京都市北区役所からの受託事業として、大学周辺地域の危険な場所を掲載した「北区安心安全マップ」を完成させた。掲載情報は単に「人が少ない場所」だけではない。10年以上パトロールを続けてきた知見を生かし、「そういえば、雨の日だけ危険になる場所もあるよね」と付け足された情報もある。「面白くなければ普段づかいにならないだろう」とグルメ情報も追加された。こうした緻密なノウハウや実践スキルが日本各地に伝播されていく。子どもたちや大人たち、行政もつないでいく「民間防犯のプロフェッショナルたち」。20年、50年後に向けた人材養成は静かに、しかし着実に進んでいる。

防犯意識を地域に伝える。こうしたノウハウもやがて全国へ広がっていく

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