モノの共有から想いの共有へ。
シェアの概念、進化中

学生の地域貢献活動とレンタルビジネスの会社が出会い、新たなシェアモデルの創出へ

購入からレンタルへ。進化を遂げた「所有」の考え方

「モノのシェア」の先に見えてきた「想いのシェア」

地域活性に孤軍奮闘する学生の想いを“レンタル”がつなげ、広げた

モノをシェアする行為が、「想いをシェア」するきっかけへ

レンタル事業に「有限な資源の共有」という価値を見出した、ある企業

1995年1月。関西を襲った阪神・淡路大震災。犠牲者は6千人以上、家屋の全壊・半壊は20万戸以上に及んだ未曾有の大災害であった。「ボランティア」という概念が一気に普及したきっかけのひとつでもある。だが、この震災が「レンタルビジネス」の社会貢献力が発揮されたエポックメイキングだったことを知る人はそう多くない。復旧最優先の中、仮設住宅の建設も急務であった震災後、什器・備品等のレンタル業を営んでいた大阪のエイトレント株式会社は自治体からの要請に協力。8,000台ものエアコンを用意し、仮設住宅一戸一戸に据え付けた。レンタルシステムを活用することにより復興予算内での最大限の環境整備を実現したのである。さかのぼること50年以上前から「地球資源の循環有効利用」を哲理にレンタル業の価値を追求してきた同社のさらなる挑戦でもあった。 時は過ぎ、2017年。同じ関西圏で経営学を学ぶ京都産業大学の学生たちは、困っていた。地元商店街の活性化を願い企画した「芝生カフェ」。商店街内の店舗を借り受け、「全フロア芝生に」。イートインならぬ“アウトイン”と言うべきか、商店街で買い物をした商品をごろりと寝転がりながら食べるもよし、家族同士で休憩しながら「次は何をウィンドウショッピングしようか」とおしゃべりするもよし。夢のある企画にクラウドファンディングの資金も集まり、芝生購入の予算も確保できた。だが……「使い終わった芝生、どうしよう??」 多くの人々の想いを集めて購入する膨大な量の芝生。捨ててしまうわけにもいかない。とはいえ他の使い道も思いつかない。そのとき、頭をよぎったのが、以前「環境マネジメント論」という講義で出合ったエイトレント社であり、「レンタルを通じたソリューション事業」という考え方であった。

学生がクラウドファンディングサイトに掲載した「夢の芝生カフェ」

夢見る学生たちの想いを、もっと多くの人につなげていく「新たなシェア」

外部講師として登壇していた同社の社長、中塚克敏に学生が相談したところ、想像以上の答えが返ってきた。「一緒に解決方法を考えてみませんか?」 芝生という「モノ」を相談したつもりだった学生に「想いを共有する」というリターンが返ってきたのである。後に中塚社長は語る。「学生さんたちの熱い想いに触れ、何が一番解決につながるのだろうと考えました。だから、設置条件と予算を詳しく聞いてみたのです。一緒に“実現した理想”のイメージを描きたかったですから…」。聞いてみた所、学生たちが考えていたのは比較的安価に購入できる30cm各程度のミニ芝生をフロア一面に敷き詰めること。だがそれでは手間がかかり過ぎる上、理想である「みんなが心地よい芝生の上でくつろげる空間」には十分ではない。「いっそ大きな芝生で、もっと厚みのある、心地よいものを」。それなら、理想も実現できるうえ、エイトレント社としても再利用・再レンタルが可能になる。Win-Winのソリューションを中塚社長は提案した。しかも、取り付け方や扱い方までわざわざ出向いて技術指導をするという熱の入れよう。結果、芝生カフェのイベントは大好評。地域活性プロジェクトは成功のうちに終わったという。初期の役割を果たした芝生たちはその後、意外にもさまざまなイベント先で重宝され、人から人へ、各地で癒やしや賑わいを呼び起こしている。 かつて大量消費社会の時代、我々現代人は「買うこと、所有すること」が喜びでありステータスでもあった。レンタルという力が「所有からシェアへ」とその考え方を変え、いま我々は共有する喜びや便利さを享受し、それを“カッコいい”とすら思うようになりつつある。だがその先に、「モノのシェア」を超えた「想いのシェア」があるのではないだろうか。学生たちが商店街の人々と共にした想いがクラウドファンディングにより多くの人々につながり、そしてエイトレント社の心も動かし、同社の“レンタル芝生”は各地を循環しながらさらに多くの人々に喜びを提供している。中塚社長は語る。「レンタルする“モノ”はあくまでソリューションの一部。直接ご相談いただくお客さまはもちろん、そのモノの周りに人が集って生まれる喜びや暮らし、さらにその先にある地球環境まで見据えて、期待を超える提案を生み出すことこそ会社の存在意義。こうした課題解決を半世紀以上お客さまと共に積み重ね、喜びを共有してきた私たちならではの、社会における務めなのです」。実は「想いのシェア」はこれで終わりではない。想いを共有できた学生たちの後輩ならばと、同社は経営学部の学生数名をインターンシップ生として受け入れることとなる。また、学生たちを指導していた同大学の在間敬子教授が受け持つ「環境マネジメント論」の講義には今年も中塚社長が登壇。「『レンタル』=『共有(シェア)』」の想いや可能性を数百人の学生に伝え続けているのだ。モノがつなげる想いは、次々と人へ、未来へと広がっている。

学生に語りかける中塚社長。若者に受け継がれた想いが次の価値をつくっていく

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