移動が変われば、都市が変わる。

京都の大学初の試み。シェアサイクルのサービス導入を開始

徒歩15分で、歩く人は少ないが自転車なら5分

土地のプロ × システムのプロ × 大人数施設が手を組んだら?

駅から自転車。この仕組みが都市の人的移動と景観を変える

IT × スマホ × 自転車 が、京都の景観まで変える

道路や設備は変えにくい。しかし人の動きは変えられる。

現在の日本の道路は、基本的に「自動車が走るもの」として設計されている。逆にいえば、自動車が誕生する以前、明治や江戸時代には、道路の幅はもっと狭くてよく、また、そのほとんどが現在でいう「歩行者天国」状態であったと想像される。京都の地にはそうした路地もいまだに残っており、良い風情を観光客に提供しているが、一方でその「風情ある路地」にも自動車は通る。歩いている人間が身をそらさないと車が通れないような風景も日常茶飯事である。自動車が全ての悪ではないが、もう少し街や人の動きに合わせた都市環境はないものか。高度経済成長で日本中の街の風景が変わるなか、その伝統を必死で守り抜き、現代的利便性と街の伝統を両立させようとしてきた京都は、そうした取り組みの最新の地といえるであろう。2007年に制定された京都府景観条例では全国でも最も厳しい規制が敷かれ、「茶色いファストフード店」「町家のようなコンビニエンスストア」が街中で落ち着いた雰囲気を醸し出している。しかし、その中を行き来する交通機関だけはどうにもできない…のだろうか。そこにひとつの答えを見出そうとしたのが、「シェアサイクル」である。盆地で山々に取り囲まれた京の地は基本的には平坦。また地下鉄や私鉄、チンチン電車も発達しており、長距離移動のための拠点ネットワークは張り巡らされている。後は中距離〜近距離移動のサポートが自転車でできないか。これにより、人の流れが変われば、街中を行き来する交通機関の風景も次第に変わっていく。つまり、街の風景が変わっていくのである。2018年8月、京都産業大学キャンパス内の駐輪場に、シェアサイクル用のポートが設けられた。それだけではない。大学から徒歩約20分先にある二軒茶屋駅にも、同様のポートが設けられた。二軒茶屋と大学間にはもともと混雑解消のためのシャトルバスも設けられていたが、学生の行き来が集中する時間帯には混雑が起きざるを得ず、バスの増便も行われていたのである。

京都市内の大学初。京都産業大学内に設けられた駐輪場のシェアサイクルポート

シェアを実現するための、四者協働

実は日本ではエコブームが起きたころからサイクルシェアの話はあり、かつていくつかの事業者たちがその普及に挑戦してきたものの、あまりうまく普及しきれなかったという歴史もあった。その要因には、駐輪場のポート場所の確保や、乗り捨てできない、つまり戻しに来ないといけないというシステム的な不便さなどいくつかある。ある事業者が始めたサイクルシェアの自転車が街のあちこちで乗り捨てられ「自転車が街を汚す」という望まざる自体になったということもあったという。今回の取り組みでは、大移動する「人(学生)」を多数抱える京都産業大学と、都市のあちこちに大小さまざまな駐車場を持つ大和ハウスパーキング株式会社と、主要な乗り継ぎ拠点を有する京阪電気鉄道株式会社、そしてアプリケーションの開発を担う株式会社オーシャンブルースマートの四者体制が確立されていることが大きな特徴だ。使用する人や機会がなければビジネスとして成り立たない。しかし、ピストンのように駅と大学を往復するだけのサービスでは魅力は少ない上、交通手段としての自由度が少ない。駐車場や駅という「場」を持つ大和ハウスパーキング・京阪電鉄と提携し、市内の各地にポートを用意することで、「人」は「場」から場へ移動を楽しむことができるのだ。そして何よりも、こうした複雑な人の動きをコントロール・管理できるアプリケーション・ITの存在である。ポート間を行き来する自転車の複雑な動きをリアルタイムで管理することで、利用者は「いまから行くポートに自転車はあるか」「どこに返そう」などストレスのない利用を行うことができる。人・場・システム。この3者が揃ったことで、準備は整った。人の動きを変えていく。普及すればするほど街の景観が変わっていく。利用者まで巻き込んだ「四者体制」といえるかもしれないこの試みが、京都に新たな可能性を描こうとしている。

スマホで空き台数の確認が可能。現地についたら自転車にかざし自動貸出

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