過疎が転じて地域を富ます。
活気とは人口ではなく、出会いの密度。

築100年の古民家と、竹で灯したイルミネーションが過疎地域を照らす

「人口」という制約からの脱却

脱却の突破口は「人の密度」と「人の流入」という発想

空き家のDIYで、“人”が動き始める

「数」という先入観から「つながり密度」という地域観へ

地域とは何か? 原点の問いかけが「課題を資源に」転換させた。

京都府南部に位置する人口約8000人の小さな町、井手町。人口減少に苦しんでいたこの町が京都産業大学と連携協力包括協定をむすんだのは2013年のこと。以来、経済学部 大西辰彦ゼミの学生を中心に長期的な協働活動が行われてきた。ひとつの転機となったのは2014年。それまで井手町では「竹害」と呼ばれる現象にも悩まされていた。人口減少が竹林の管理不足を招き、周囲の生態系のバランスを崩したり、土壌保持力の弱い竹の根の増加により崖崩れのリスクが高まるといった状況に陥っていたのである。大西ゼミの学生たちはこの「竹」を逆手にとり、竹灯籠によるイベントを企画した。これは、「町おこしは、定住人口の増加ももちろんだが、“交流人口”を増やすことも大事」という考えによるもの。竹害を減らしながらイルミネーションによる交流活性化を狙った企画であった。しかし、一筋縄ではいかない。町の人からは「何本竹がいると思うのだ」「できっこない 」という反対の声。だが動かないということは変わらないということでもある。「まず自分たちが動こう」。学生たちは自ら竹を切り、竹灯籠を流す川も清掃していった。やがて、その姿に同調する町の人が増えていく。「 イルミネーションは、外から人を呼び込むだけではなく、町民の方にも町の魅力や誇りを再認識してもらう試みでした」と語る大西教授。奇しくも反対の声は、町民の行動を引き起こすきっかけとなったのだ。イルミネーションは外部からの観光客を増やしただけでなく、地域の人々の心も灯し、「皆さんが灯した情熱の橙は、今も町 の人々の心の中で輝いています」という手紙すらもらうようになった。

結果、1300もの数に増えた竹灯籠。町を灯した。
次の目標は交流の拠点づくり。古民家の再生へ挑戦。

つながる場、つながる時間...そして地域は再び動き始めた。

「地域とは何か?」その思考は協働を続けるうち、さらに深まっていった。舞台は町の古民家。竹同様、人口減少により取り残されていた無人の家だった。これを、学生と町の人々が協力して改装。五右衛門風呂、旧型のテレビ...置き去りにされていた廃物も途端に「町の人々が懐かしがり、集まる」ための資源に。人口は少なくても、集まる機会が増えれば活気は高まる。いわば“つながり密度”と言えるかもしれない。この民家ではその後、大学の茶道研究部によるお茶会などさまざまなイベントが行われ、町にさらなる活気がうまれ始めている。2018年には町の小学校での落語会も開催。また、こうした交流拠点や町民のつながりを力に、「井手町をサイクリングの地」にする試みも推し進められている。現地の人々と協働で制作した、ロードバイクをテーマにした映画「神さまの轍」も町の活性化を後押し。町のあちこちに笑顔がうまれ、「つながり」がうまれている。人口は減ってもつながりは増やせる。それは、人口が増え続けても「孤独」が増え続けている都市部への、過疎地域からの痛烈なアンチテーゼなのかもしれない。

小学校の落語会には多くの児童や父兄が押し寄せた。
古民家では、親子科学教室も開催。

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