「米国第一主義」の
意味を考える

トランプ大統領の行動を捉え直す「歴史的視点」

トランプ大統領の「America first」に秘められた歴史

実はアメリカは元々、「孤立主義」「単独行動主義」の国

現状を分析する力、歴史という縦軸と国際関係という横軸

私たちは、本当に考え抜いた上で意見を発しているのだろうか

アメリカは元々、孤立主義

むかしむかし、ある国がありました。国、といっても支配しているのは別のある国。運営の仕方に口を出したり、税金を勝手に増やしたり。人々は困っていました。「自分たちの土地は自分たちで運営するのだ!」と必死で戦い、ようやく独立を果たしたその国の名は「アメリカ合衆国」。ちなみにそのとき、軍隊を率いてイギリスと戦ったのが後の初代大統領、ワシントンでした。

……と、このように昔話風に語るとシンプルに見えてくるのが「独立国とは何なのか」という概念。他国の干渉を受けないことが独立国の定義のひとつだとするならば、アメリカ合衆国とはまさしく他国の干渉を受けないためにうまれた組織だといえるだろう。いまでこそ米国は「世界の警察」ともいわれ、さまざまな地域との関係を持っているが、元々は「孤立主義」の国としてうまれた。それを明言化したのが第5代大統領モンローであり、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸間の相互不干渉を提唱した方針は後に「モンロー主義」とよばれた。干渉させず、干渉せず。一方で「単独行動主義」も建国期以来のアメリカ外交の伝統である。初代大統領のワシントンは大統領職を離れる告別の辞において欧州列強諸国との恒久的同盟を禁じたという。他国との適切な距離を保つことによって自国の行動の自由を確保しようとしたのである。京都産業大学外国語学部の高原秀介教授(2019年4月 国際関係学部教授に就任予定)は、歴史を客観的に見つめながら読み解く。

「支配される地域」からの独立。自由に対するシビアな意識はここから始まった

トランプ大統領を評価する、あなたの目も問われている

考えてみれば、現在の国際連合の前身、国際連盟のときにもモンロー主義は発動した。第一次世界大戦後に国際連盟の意義を提唱し実現にこぎつけたキーパーソンがアメリカ大統領のウィルソンであったにもかかわらず、その国の議会は国際連盟への参加を否決したのである。「自国の利益を守るために」「干渉せず、干渉させず」。

いわば自由に対するシビアな意識であるともいえる。では2000年代前半に「テロとの戦い」を宣言し、イラク戦争など他国への干渉に突き進んだブッシュ大統領の政策は何なのかという声もあるだろうが、これも「過剰介入をめぐる行動の自由」と言えるかもしれない。ならばトランプ大統領の政策は「過少介入をめぐる行動の自由」と捉えることもできるだろう。

確かに、米国はそのような第一主義的傾向を歴史的に内包してきた。しかし、ここでもう一歩踏み込んで考えなくてはならないことがある。それは、米国が19世紀までは孤立主義のもとで建国以来の普遍的価値を純粋培養できたものの、20世紀以降には、大国へと変貌を遂げる中で世界との密接な関わりを通じて、自らが国際秩序を担う意識を徐々に醸成し、その役割を担ってきたという実績と事実である。

たとえば、かつてのモンロー主義は、米国が未だ大国ではない時代の代物であって、旧世界(欧州)に対する孤立主義的色彩が顕著であった。ところが、20世紀になり米国が大国へと変貌を遂げるに従い、モンロー主義は旧世界からラテンアメリカ諸国を守るための米国による介入の論理へと転化していったのである。また、二度の世界大戦の教訓を踏まえ、大国が担うべき責任の一環として、米国が長きに亘り国際公共財を提供し続けてきた点も、決して軽視すべきではないだろう。

おそらくトランプ政権に欠落しているのは、大国としての米国がその現状に見合い持つべき責任感ではなかろうか。中国・ロシアをはじめとした現状変更志向国家の台頭が意識されるからこそ、米国は自由・民主主義・人権・法の支配といった普遍的価値を標榜しつつ、国際社会におけるコーディネーターとしての役割を担うことが期待されている。他方、価値を共有する同盟諸国は、米国の負担を軽減すべく、国際秩序の維持のためにどのようなサポートが可能か、自らの役割を問い、積極的にその使命を果たすべきといえよう。

ニュースを見てメディアの意見に左右されているだけでは真実は見えてこない。歴史という縦軸、国同士の関係という横軸などさまざまな視点から見つめることで、「現状を分析する力」を手にすることができる。答えはすぐに出ないとしても、一方的な主観から脱する自由を手に入れられるのである。

自由の国、アメリカは、これからの世界とどう関わっていくのだろうか

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