観光概念の転機か?
「島で遊ぶ」から「島を遊ぶ」へ

地元のハモをどう料理する? インスタグラム上での対決が生んだ、小豆島観光資源の再発見

人気となる観光地の条件とは?

観光資源の活用だけが、観光産業の戦略なのだろうか

SNS上でレシピ対決。そこには、これまで見たことのない美しい景色が広がった

「幸福はプロセスの中にある」

瀬戸内海に浮かぶ、美しい島

淡路島から西に数十キロ。瀬戸内海の穏やかな流れの中に、「オリーブの島」と呼ばれる美しい島がある。その島ではかつて「二十四の瞳」という映画も撮影され、当時のロケ風景の面影を今に伝えるセットも残されている。その島の名「小豆島」でネット検索をかければ、他にもさまざまな観光地が写真付きで紹介されるはずだ。潮の満ち引きで1日に2回だけ、小島にわたることができる小道が現れる「エンジェルロード」や、小高い丘の上で青空に映えるようにそびえる真っ白な風車「ギリシャ風車」などもその一つだ。本土とつながる橋がなく、船で渡らなければならないのに人気観光スポットとなっているのはこうした観光資源によるものが大きいだろう。だがそれだけではない。今では「女子旅の聖地」と言われるほどの人気を博しているこの地、それは地元民の努力も大きい。二十四の瞳に限らず、さまざまな映画撮影を誘致できる環境を整え、「八日目の蝉」「8年越しの花嫁」など名作の舞台にもなった。「小豆島では題名に数字が入った映画がヒットする」というジンクスを観光商談会で積極的に披露するなど「観光資源の創造」にも努めている。そこにもう一つ、新しい試みが加わったのは2018年のことだった。

小豆島の美しい風景のひとつ、エンジェルロード

観光資源を外部に発見してもらう、という選択肢

小豆島から遠く離れた京都の地にある京都産業大学。その現代社会学部の学生たちが「地域活性化とは何か」というプロジェクトに挑むべく、小豆島土庄町と提携し、3年間をかけて取り組むという長期プロジェクトを始めた。もちろんこのプロジェクトは次々と下級生に引き継がれるため、今後何年も続いていくわけなのだが、彼らが2018年にチャレンジしたことが、インスタグラムと地元の名産、鱧(はも)をむすびつけるというもの。大学生たちは普段からなじみのあるインスタグラムを用い、料理自慢の投稿者(インスタグラマー)たちに接触。インスタグラマーたちによる鱧料理コンテスト「小豆島 島鱧レシピコンテスト」を開催したのだ。鱧料理と言えば湯引きなどのお刺身が有名だが、「これが鱧料理?」と目を疑うほどの鮮やかで楽しそうな料理の数々が、画面上に次々と展開された。各インスタグラマーたちにはそれぞれのフォロワーがいる。そのつながりの合計、10万人以上。レシピは次々と拡散され、「いいね!」がつけられていった。興味深いのは、直接「小豆島の風景」をアップしなかったということだ。小豆島の風景をアップするのであれば、従来型の「観光地のプッシュ式広報」と変わらなかったであろう。島の資源である鱧を題材に「みんなで遊ぶ」「みんなで楽しむ」ことが、間接的に島への関心喚起につながるのだ。新しい広報のヒントが、ここにあるのではなかろうか。学生たちを指導した現代社会学部 塩谷芳也助教は語る。「幸福はプロセスの中にある」と。あらかじめ用意された観光地で遊ぶのではなく、自分たちで観光地そのものを遊ぶ。行ったときだけ楽しい旅行、誰かから与えられる楽しさから、「行く前から楽しい旅行」「自分たちで見つける楽しさ」へ。新しい観光、新しい地域施策のヒントが、ここに隠されている。

「島鱧のパイ包み焼き」(左)と島鱧ガーリックソテー(右)

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