ロボット義手の最新研究、
腕が動く感覚を再現

接続部の振動で22種類の「動いている感じ」を伝えることに成功

NATIONAL GEOGRAPHIC

文=Michael Greshko/訳=三枝小夜子

京都産業大学による見どころチェック!

これまでは、「義手が動いている感覚」までは感じられなかった

接続部の振動が作り出す「錯覚」が、義手の動きを感じさせる

めざすは、義手や義肢を「患者の自然な一部」にすること

 あなたが手足を動かす際には、いちいち目で見て確認する必要はない。自分の手足がどこにあってどんな動きをしているかは、直感的にわかるからだ。

 こうした「動いている感じ」、いわゆる運動感覚は、現在の義肢(義手や義足)にはない。たとえばモーターで動かせる義手を使っていても、その動く感覚を感じ取るのは難しい。

 今回、新たな研究で、巧妙に作り出された錯覚によって運動感覚を義肢まで拡張する方法が示され、学術誌『サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)』誌に発表された。

「手を開いたり閉じたりするときの直感的な感覚を患者に取り戻させることで、『自己』と『機械』を脳が区別する知覚をぼかすことができるのです」と、今回の論文の著者で米クリーブランド・クリニックのバイオニック・インテグレーション研究所のポール・マラスコ所長は説明する。(参考記事:「私はこうして「世界初の公認サイボーグ」になった」) 

22種類の動きを伝達

 では、失われた手足の運動感覚をどうやって取り戻させるのか。そのカギは、正確に狙いを定めた振動を利用することだ。

 健常者を対象にした従来の研究で、被験者の手足の腱をうまく振動させてやると、手足が動いたり回転したりするような錯覚を与えられることがわかっていた。1977年のある研究では非常に強力な錯覚を生じさせることに成功し、被験者たちは自分の手首がありえない角度に曲がったと感じたという。

 同様の振動が義肢でも効果があるかどうかを確認するため、マラスコ氏のチームは6人の患者について実験を行った。彼らは、従来のロボット義手をコントロールできるように、切断された腕の神経を、近くの筋肉に分布させる手術をすでに受けている。(参考記事:「2010年1月号特集:脳とつながるハイテク義手」

 研究者たちはまず、小型の振動装置を使って、被験者の腕の神経が分布する接続部の筋肉を振動させた。そのうえで、被験者がどのような手の動きとして感じているかを、もう片方の手で再現してもらった。すると驚いたことに、被験者たちは、失われた手が合計22種類の動きを行うのを感じていた。そのすべてが、振動が作り出した錯覚なのだ。

「うまくいったとしても、手首の動きのような、関節1つか2つ分の簡単な動きだろうと思っていました。ところが蓋を開けてみると、複数の指が連動した、手全体の複雑な動きを感じていたのです。被験者はそれぞれの指がどこを向き、何をしているのかをわかっていて、面白い形に手を握っていると感じていました。本当に驚きました」。マラスコ氏はギズモードのインタビューに対しこのように語った。(参考記事:「テクノロジーで加速する人類の進化」

 その後、3人の被験者が参加した別の実験で、マラスコ氏らは、

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