ファストフードで体内に「永遠の化学物質」の危険

規制が始まったフッ素化合物PFAS、日常生活に潜んでいる、研究

NATIONAL GEOGRAPHIC

文=SARAH GIBBENS/訳=牧野建志
(PHOTOGRAPH BY BRIAN FINKE, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

京都産業大学による見どころチェック!

1万以上の血液を調査。約70%の血液から化学物質PFASを検出

PFASはパンやデザートの包み紙など身近なところにひそむ

体内に何年も残留し、体重増加やがんを引き起こす可能性も

  ファストフードが健康に良くない理由はこれまで数々挙げられてきたが、また新たな問題が加わった。「PFAS」と呼ばれる化学物質が、人体に蓄積されている可能性があるというのだ。

 PFAS(パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)とは、耐水性や耐火性を高めるため、一般的な家庭用品に大量に使用されているフッ素化合物の総称。「永遠に残る化学物質」として、近年、欧米で大きな問題になっている。(参考記事:「シリーズ 90億人の食 米国に広がる新たな飢餓」

 ファストフードを食べた人と手作りの料理を食べた人の血中PFAS濃度について調べた新たな論文が、10月9日付けで学術誌「Environmental Health Perspectives」に発表された。

 2003年~2014年に1万人以上から採取した血液サンプル中のPFASを調べたところ、約70%の血液から広く使われている5種類のPFASが検出されたという。研究には、米国疾病予防管理センター(CDC)が定期的に更新する全国健康栄養調査(NHNES)のデータを用いた。

 この調査データでは、過去24時間、1週間、1カ月の間に、どれくらいの頻度でファストフードを食べたかについても聞いているが、それらとPFAS濃度の関係を調べたところ、24時間以内にファストフードを食べた人は血中PFAS濃度が高い傾向にあることがわかった。

 人体から速やかに排出される他の化学物質とは異なり、PFASは何年も残留するおそれがある。このため、定期的にファストフードを食べると、体内にPFASが蓄積されることになる。(参考記事:「人体にマイクロプラスチック、初の報告」

あちこちに含まれる物質

  どの程度の量で人の健康に悪影響が出始めるかは、まだ明らかになっていない。だが、PFASががんや甲状腺疾患、ホルモンの変化、体重増加に関連があることは、多くの研究によりわかっている。

 米国のワシントン州とカリフォルニア州サンフランシスコ市では、食品容器へのPFASの使用を制限する法令が可決された。

  ファストフードの包み紙と容器400種類を調べた2017年の調査では、パンとデザートの包み紙の半分以上にPFASが含まれていることが判明した。また、サンドイッチとハンバーガーの包み紙の40%近く、フライドポテトを入れる容器の板紙の20%にも含まれていた。PFASは耐水性・耐油性に優れ、食品の携帯が容易になるため、包装の保護剤として広く添加されている。

 研究者が心配しているのは、まさにその丈夫さだ。

 「PFASへの暴露(化学物質に生体がさらされること)のレベルをどんどん低くしながら、健康にどんな影響が起こるかを検討しているところです」と、今回の論文の共著者で、米研究機関「Silent Spring Institute(沈黙の春研究所)」の環境工学者で化学者でもあるローレル・シャイダー氏は話す。

「食品は、PFASに接触する源の1つにすぎません」と、PFASが塗料やカーペット、衣類にも一般に含まれていることを、同氏は指摘した。「暴露量を減らそうとすることには意味があると思いますが、現段階では、ファストフードを食べる頻度と健康への悪影響を関連づけることはできません」

 PFASは分解されないことで非常に有名で、「永遠に残る化学物質」と呼ばれることも多い。また、ビスフェノールA(BPA)のような他の化学物質は数時間で体内から検出されなくなるのに対し、PFASの場合、最速のものでも数カ月も体内に残留することがある。(参考記事:「「汗をかいてデトックス」はウソだった、研究報告」

動物実験では肝臓や腎臓、免疫系に障害

  PFASで汚染されたチーズバーガーを週に5個食べた場合と1個食べた場合の、健康への影響度合いを測定するのは難しい。PFASは、いたる所に存在するからだ。

 ある化学物質の影響を確認するために科学者がまず行う研究は、ラットやマウスなどの実験動物をさまざまな条件で暴露させることだ。こうした動物実験の結果、PFASへ暴露すると、一貫して肝臓や腎臓、免疫系に障害が出るということが示された。腫瘍の発生も広く見られ、中には、がんや甲状腺異常を引き起こす兆候を示すこともあった。

 ただし、PFASの規制には、大規模な集団レベルで疾患の傾向を調べる必要がある。(参考記事:「健康情報の「エビデンス」を鵜呑みにしてはいけない理由」

  実際、乳幼児期の鉛への暴露が、後の認知能力に影響を及ぼしうることを示すのに、数十もの集団調査を要した。この結果を受け、鉛の使用許容量に関して、より厳しく規制されるようになった。

 一方、食品容器などに用いられる化学物質ビスフェノールA(BPA)も、健康に影響を及ぼす可能性が研究で指摘されているが、いまだに科学者の意見は一致しておらず、米国食品医薬品局(FDA)はビスフェノールAについて「直ちに健康リスクを生じるものではない」としている。(参考記事:「欧米で回避されるBPA、代替物質も有害?」

水道にも含まれている?

  今回の論文について、米アリゾナ州立大学環境健康工学センター所長のロルフ・ハルデン氏は、ファストフードとPFAS摂取に明確な関連があることを示している、と述べる。だが、消費財全般においてPFAS含有量が非常に多いことの方が心配だと語る。

「ポップコーンやファストフードにはさほど興味はありません。憂慮しているのは、米国民の70%が、分解されることのない化学物質にさらされているということです」と同氏は話す。

 PFASにさらされた食品を摂取することの影響もさることながら、PFASが捨てられた場合の環境への影響について消費者は懸念すべきだ、とシャイダー氏は言う。

 たとえば、ごみの埋立処分場ではPFASが地下水に浸出する恐れがある。9月25日付けで環境NPO「Environmental Working Group」が発表した報告によると、カリフォルニア州の住民750万人が利用する水道水から、PFASが検出されたという。(参考記事:「世界の「抗生物質汚染」、今すぐ対策を、最新研究」

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