より遅く危険になる台風、
上陸後の速度は30%減

「この傾向はずっと続いています」と研究者、被害の拡大を懸念

NATIONAL GEOGRAPHIC

文=CRAIG WELCH/訳=米井香織
PHOTOGRAPH BY CIRA, NOAA

京都産業大学による見どころチェック!

ノロノロ台風に潜む危険性

遅い、大きい、強い。地球温暖化時代の“新種”の台風

進路も新た。未踏の都市を襲う未来も

 6月6日付けの学術誌「Nature」に発表された最新の研究によれば、ハリケーンや台風などの熱帯低気圧の移動速度が数十年前より遅くなっており、より長く、大きな被害につながっていることが明らかになった。

 また、学術誌「Journal of Climate」5月号に発表された別の研究でも、今後、温暖化によって熱帯低気圧の移動速度が遅くなることが示唆されている。

 熱帯低気圧の移動速度が遅くなるのはよいことだと思うかもしれないが、実際は逆だ。熱帯低気圧内の風速は変わらず、移動速度のみ遅くなれば、同じ場所に激しい雨が降り続けることになる。(参考記事:「【動画】運転中に竜巻に遭遇、とるべき行動は?」

 2つの研究を合わせると、気候変動はこれまでの予想をはるかに超えるレベルで、ハリケーンや台風の危険をすでに増幅させているようだ。さらに、今後も危険な気象現象は増え続け、特に、大洪水が起きる可能性が高まる。(参考記事:「ハリケーン、サイクロン、台風の違いは?」

「熱帯低気圧の速度が低下しても、何ひとつよいことはありません」と話すのは、「Nature」の論文の著者で、米ウィスコンシン州マディソンにある米海洋大気局(NOAA)気象気候センターのジェームズ・コーシン氏だ。「高潮がひどくなり、建造物が強風にさらされる時間が長引き、そして、降雨量が増えます」(参考記事:「巨大嵐の後、米国の家々が宙に浮き始めた」


被害は拡大する一方

 2017年8月、ハリケーン・ハービーによる集中豪雨で、米テキサス州ヒューストンの一部で数百ミリの降水量を記録した。のちに、豪雨となったのは、海水温と気温が上昇したことで、熱帯低気圧により多くの水蒸気が供給されたためという研究結果が報告された。気候変動が雨の強さと熱帯低気圧の発生率の両方を増加させたということだった。(参考記事:「大型ハリケーン「ハービー」被害の記録 写真29点」) 

 コーシン氏は今回の論文で、熱帯低気圧の被害が拡大している別の理由を突き止めた。論文によれば、熱帯低気圧は1949〜2016年に、全体の移動速度が平均で10%低下しているという。上陸後に速度がより低下する地域もあった。特に、太平洋北西部では

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