ウミスズメ、柑橘の香りを
出してメス誘う、研究

シャネルの香水にも使われる成分を体内で生産

NATIONAL GEOGRAPHIC

文=Benji Jones/訳=北村京子
PHOTOGRAPH BY KEVIN SCHAFER, MINDEN PICTURES/NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE

京都産業大学による見どころチェック!

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選ばれる遺伝子へ。生命進化の秘密がニオイから見えてくる

 米国アラスカ州のシューマギン諸島には柑橘の香りが漂っている。岩だらけで果樹などないにもかかわらずだ。

 原因は、海鳥の仲間エトロフウミスズメのコロニー(集団繁殖地)にある。この鳥のオスは、メスをひき付けるために柑橘系のにおいを放出する。学術誌『Behavioral Ecology』に発表された新たな研究によると、彼らの性的な魅力には、柑橘系のにおいの強さと羽飾りのサイズが大きく関わっているという。

 頭の羽飾り(前方にくるりと巻いた羽毛の束)が大きいほど、オスの性的魅力が増すことは、以前から知られていた。しかし手の込んだ求愛ダンスや歌とちがって、羽飾りはエネルギーをほとんど使わずに済むアピール方法だ。したがってメスが相手の体の丈夫さを判断するうえで、信頼のおける基準であるとは言いがたい。

 羽飾りが大きい個体にひき付けさせるのに、何かほかの要因があるはずだと、研究者らは推測していた。

 今回の研究を率いた海洋生物学者ヘクター・ダグラス氏は、においがその要因ではないかと考えた。「彼らが発する柑橘のにおいはとにかく強烈です。私が知る限り、これほど強いにおいを発する鳥はほかにいません」

 しかし研究を開始した2002年当時では、鳥が嗅覚を持っているという考え自体が一般的ではなかった。ましてや、においが体の丈夫さを示すシグナルとして機能するという仮説はとても突飛なものと受け取られた。そこでダグラス氏は、実際に確かめてみることにした。(参考記事:「海鳥は「匂いの地図」を持っている?」

香りが強いほど体が丈夫

 同年夏、ダグラス氏はシューマギン諸島でエトロフウミスズメを数十羽捕獲し、一羽ずつ部屋に入れて、そのにおいの量を測定した。

 空気を鳥の体に吹き付け、においのもとである揮発性の分子を拾い上げて分析した。この分子はアルデヒドの一種で、柑橘類の皮や「シャネルNo.5」といった市販の香水にも含まれる。

 ダグラス氏はまた、鳥の体の丈夫さを測るために、ストレスがかかった際に分泌量が増えるコルチコステロンというホルモンに注目したテストを行った。このホルモンを分泌するスピードが速いほど、その個体の健康状態は良好ということになる。

 一連の調査の結果、興味深いパターンが浮かび上がってきた。 

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