ウィンブルドンの
美しい芝生は科学の結晶

改良重ね管理を徹底、期間中は気象学者も活躍

NATIONAL GEOGRAPHIC

文=Alejandra Borunda/訳=米井香織
PHOTOGRAPH BY BEN STANSALL, AFP VIA GETTY IMAGES

京都産業大学による見どころチェック!

牧草地で短く刈り込まれた芝生が、その起源

タンポポも生えていた、初期のコート

農業科学の進化がコートを、そしてスポーツを進化させてきた

 毎年、256人の夢見るテニスプレイヤーがウィンブルドンの芝生に立つ。2週間の熱戦が幕を開けるとき、コートに敷き詰められた5400万本の芝はすべて高さ8ミリに刈られ、鮮やかな緑色がまぶしい。

 大会期間中には、踏みつけられ、スライディングされ、ときには悔し涙の塩分にさらされるが、トーナメントが終わるまで芝の状態はなんとか保たれる。

 ウィンブルドンのコート管理責任者ニール・スタブリー氏は「選手権は1年に及ぶ作業の集大成です」と話す。「しかし、トーナメントが始まれば、いかにダメージを抑えるかがすべてです。試合を重ねれば、その分ダメージが増えます。それだけはどうしようもありません」

 ウィンブルドンのグラウンドキーパーは1年をかけて芝生を管理し、2週間の酷使に備える。グラウンドキーパーたちがフサフサで青々とした芝生を維持するため、数百万年に及ぶ草の進化の歴史、数十年の植物科学、数年の入念な準備、1時間単位の気象学がどのように活かされているかを紹介しよう。

芝生の起源

 現在、地球上の地表の約3分の1が草原だ。しかし、進化の歴史をさかのぼると、草は新参者に近い。

 約7000万年前、ウィンブルドンの有名な芝生の遠い仲間が地球に現れた。最後の非鳥類型恐竜が初期の草を食べた可能性もある。草はいったん根づくと、場所に合わせて形を変えながら、たちまち地球全体に広がった。北米大陸の西側の平原では、優雅に葉を伸ばす背の高い草となり、アジアの森では、密に生える竹となった。

 多くの草はヒツジやウシなど、それを食べる動物とともに進化した。動物たちはあちこちに移動しながら、草を踏みつけ、葉を刈り取るように食べた。そのため、草は残された部分から再び成長するよう進化した。つまり、刈られるように進化したということだ。(参考記事:「頑丈な歯の齧歯類化石を発見、チリ」

 ウィンブルドンのコートをびっしり覆う光沢のある芝生は、ブリテン諸島の海洋性気候に育まれたものだ。古代の農夫たちは家畜に自然の牧草を食べさせ、しばしば共有の牧草地を中心に町が発展した。そして、常に短く刈られた牧草地で、スポーツやレクリエーションが行われるようになった。(参考記事:「晩餐会の芝生」

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