土星の環から「雨」が降っていた、予想外の事実も

NASAの探査機カッシーニ最後の偉業、土星と環の関係に新たなシナリオ

NATIONAL GEOGRAPHIC

文=Nadia Drake/訳=三枝小夜子
PHOTOGRAPHY BY NASA

京都産業大学による見どころチェック!

NASAが捉えた驚きの相互作用「土星の雨」

知られていた雨の存在。しかし仕組みと成分は未知だった

"雨"の解析が土星の歴史解明へつながる

 土星には雨が降っている。1秒間に重さ数千キロにもおよぶ氷や有機分子が、環から土星の大気中へと降り注いでいる。

 土星とその環の間で起こる驚きの相互作用。科学者らがついにそれらを目撃できたのは、NASAの土星探査機カッシーニのおかげだ。2017年末に土星に突入してミッションを終えたカッシーニは、最後の数週間に土星とその環の間を22回くぐり抜け、環から降ってくる雨を採集した。(参考記事:「さよならカッシーニ、ついに土星衝突軌道に突入」

 土星の環から降る雨の観測は、技術的な偉業というだけではない。雨の組成や降雨ペースを知ることは、土星の歴史を解き明かす上でも非常に重要だ。土星の環の起源や年代という古来の謎に、また一歩近づいたことも意味する。

「私たちはたまたま土星が壮大な環をもっている時期に居合わせたのではないしょうか?」と、米コロラド大学ボールダー校のショーン・スー氏は言う。「環が最近形成されたものだとしたら、非常に面白いことになります。ほかの氷の衛星とも関係してきます」(参考記事:「土星の衛星エンケラドスに生命はぐくむ素材」

やまない雨

 土星の環から物質が降ってくること自体はまったく意外ではない。理論的にも観測上でも、数十年前からこのことを示唆していた。しかし、土星とその周囲をまわる星々(土星系)の中で物質がどのように移動するのか、そのうちのどれくらいの部分が土星に降り注ぐのかはわかっていなかった。

 2018年10月5日付けの学術誌「サイエンス」に土星の環から降る雨について3本の論文が掲載された。論文のもとになったデータはいずれも、カッシーニが最後の日々に行った「グランドフィナーレ」という観測プログラムから得られたものだ。(参考記事:「土星の環から地球が見えた、NASAが写真公開」

 カッシーニが土星と環の間を通り抜けるときの速度は時速約11万キロにもなった。これは、カッシーニに搭載された各種の観測機器が想定する速度をはるかに上回っていたため、データの解釈は困難をきわめた。(参考記事:「土星探査機カッシーニ、最終ミッションを開始」

 NASAのジャック・コナニー氏は、「科学者たちは奮闘の末、非常に巧妙なやり方で、観測データが語っていることを解き明かしました」と言う。「観測装置の想定や科学者たちの経験の範囲をはるかに超えた作業でした」

 カッシーニは、土星と環の間をくぐり抜けて土星の重力や磁場、環の質量などを測定しながら、環から降ってくる数多くの破片を採集した。それぞれ異なる成分を調べられる3種類の観測機器が、速やかに粒子の分析に取りかかった。こうして得られた結果の中には、科学者たちの予想と異なるものもあった。

NATIONAL GEOGRAPHIC
日本版サイトへ

シェアする

関連する学び

あわせて読みたい記事

遺伝子

“海洋科学のすべてを変える技術” 環境DNAに期待 わずかな量の淡水や海水から海洋生物の生息数を調べる新技術が注目されている NATIONAL GEOGRAPHIC

環境

シャチを脅かす亡霊、禁止された有毒化学物質 30~50年後に世界のシャチの半数が消えるかもしれない、最新研究 NATIONAL GEOGRAPHIC

生命

人体の中のグローバル社会!? 細胞内の隔壁は、つながりの場でもあった オルガネラ(細胞小器官)間相互作用の可視化に成功 京都産業大学
記事一覧に戻る