【動画】魚に擬態する水中ロボ、
米MITが開発

魚たちに警戒されず至近距離で観察することに成功

NATIONAL GEOGRAPHIC

文=Michael Greshko/訳=三枝小夜子
PHOTOGRAPH COURTESY KATZSCHMANN

京都産業大学による見どころチェック!

海洋生物が危機に瀕している

「柔らかいロボット」がその生態を、そのそばで

【動画は、文章最下部のリンクよりご覧いただけます】

 フィジーの青く澄んだ海を、サンゴ礁に暮らす魚たちにまじって泳ぐのは、最新の魚型ロボット。

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、このタイプでは最も進んだ魚型ロボットを開発、3月21日付け学術誌『Science Robotics』に論文を発表した。本物の魚のようにリアルな動きを実現したこのロボットは、カメラを備えている。海洋生物にストレスを与えずに生息環境を観察でき、研究に役立つと期待されている。(参考記事:「ドローンはストレス源? 動物保護に課題」

 この魚型ロボットの名前は「SoFi(Soft Robotic Fish、柔らかいロボット魚)」。体長は約50センチ、重量は約1.6キロで、水深18メートルまで潜れる。活動時間は約40分だ。

水中ロボットはなぜ必要?

 気候変動と乱獲により海が大きな影響を受けている今、科学者たちは海洋生物を詳細に調査する必要を感じている。しかし、スキューバ・ダイビングでは、ある種の生物を近くから観察することができず、ふだんの海の様子を正確に知ることができない。一方SoFiは周囲の環境にうまく溶け込めるため、海洋生物学者の目や耳の代わりになる。(参考記事:「衛星で漁船を追跡、なんと海面の55%超で漁業が」

 論文共著者のジョゼフ・デル・プレート氏は、「ロボットの動きの設計にあたっては、観察する海洋生物たちの保護をいちばんに考えました」と言う。(参考記事:「本州の9割強相当の海洋保護区を設立、セーシェル」

クラゲ型やタコ型も試してみた

 研究者たちは、よりよい水中ロボットを製作しようと、マグロ、クラゲ、ロブスターに似せたロボットのほか、柔軟な素材を使ったタコ型ロボット(octobot)なども製作してきた。(参考記事:「タコの腕はなぜ絡まってしまわないのか」

 SoFiの共同制作者で、MITのコンピューター・人工知能研究所の博士号取得候補者ロバート・カッツシュマン氏は、「柔らかいロボットは関連分野に革命を起こすでしょう」と言う。「今回は水中で運動するロボットでしたが、歩行するロボットやものをつかむロボットも考えられます。ロボット研究のすべてが変わってくるでしょう」(参考記事:「ガラガラヘビの動き、ロボットに応用へ」

 MITのロボット研究者ダニエラ・ラス氏は、2014年以来、学生のカッツシュマン氏やデル・プレート氏とともに、ロボット魚のさまざまな試作機を製作してきた。しかし、初期のSoFiは遠隔操作ができず、90センチ以上の潜水にも耐えられなかった。

 カッツシュマン氏らはSoFiを補強し、浮力制御システムを作り直した。また、最大15メートル離れたところからダイバーが遠隔操作できるようにした。水中での通信には超音波のパルスを用いる。制御は、デル・プレート氏が設計した防水仕様の古いゲーム機用コントローラーで行う。

ロボット魚の集団放流も

 これまでのところ、SoFiの擬態はうまくいっているようだ。フィジー周辺で行った最近の試験潜水では、魚たちは特に驚いた様子もなくSoFiのすぐ近くを泳いでいた。現時点でロボット魚にはカメラしか搭載されていないが、研究チームは温度計などの各種センサーを追加したいと考えている。(参考記事:「ロボット義手の最新研究、腕が動く感覚を再現」

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