下半身まひ患者が歩行可能に、脊髄に電気刺激で

電気刺激を利用して神経経路を再編成

NATIONAL GEOGRAPHIC

文=Emily Mullin/訳=三枝小夜子
PHOTOGRAPH BY HILLARY SANCTUARY, EPFL

京都産業大学による見どころチェック!

新たな治療法で「また歩きたい」思いの実現へ

脳から脚への接続修復。“未使用”の神経を有効活用

研究を進め、歩行以外の機能も取り戻す

 電気刺激を用いる新しい手法によって、下半身まひの患者3人が再び歩けるようになったことが、科学誌『ネイチャー』11月1日号に発表された。3人は4年以上前に重い脊髄損傷を負い、脚がほとんど動かなくなっていた。

 研究者たちは、3人の体内に電気パルスを発生する無線装置を埋め込み、脊髄を刺激した。それから1週間もしないうちに、彼らは立ち上がり、支えを使った歩行にも成功した。5カ月間の理学療法と訓練の後、3人は自分の意思で脚の筋肉をコントロールし、1時間も歩けるようになった。(参考記事:「【動画】生きた筋肉で動くロボット開発、東大」

 同様の治療法による成果は、9月にも報告があったばかりだ。1つは米ルイビル大学の研究チームの報告で、脊髄を刺激する方法で、2人の患者が支えなしで立てるようになり、歩行器を使って歩けるようになったという。同じ日に発表された別の研究では、米メイヨー・クリニックの研究者が別の患者で同様の成果を出している。

 9月の2件の報告では、埋め込まれた装置には一定の刺激パターンがプリセットされていたが、今回の新たな研究では、タブレットを使ってリアルタイムに刺激をコントロールできるようなモバイルアプリを、論文の著者であるスイス連邦工科大学の神経科医グレゴワール・クルティーヌ氏が開発した。この装置により、患者自身が研究に参加していないときにも自宅で治療をコントロールできる。(参考記事:「脊髄損傷のラットが再び歩行可能に」

 最新の知見について『ネイチャー』に論説を寄せたリハビリテーション医学の専門家で、米ワシントン大学のチェット・モリッツ准教授は、こうした数例の結果は「この治療法が現実的なものであり、完全にまひした人でも再び運動ができるようになるという確信を与えてくれるものです」と解説する。

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