宇宙旅行、脳に永続的な影響か 最新研究

半年間の宇宙滞在から戻って7カ月後も髄液減らず、脳の一部の組織が減少

NATIONAL GEOGRAPHIC

文=MAYA WEI-HAA/訳=牧野建志
Photograph by Steve Swanson, NASA

京都産業大学による見どころチェック!

宇宙探査の危険性。「無重力空間」で脳が縮む

縮んだ脳は、帰還しても戻らない?

視力、筋肉、骨…。身体中にいたる宇宙滞在の副作用

 人間の体は、重力の中でうまく働くように進化してきた。無重力下では、地上と同じようには機能しない。体液が頭のほうに上ることから、DNAの働きの変化まで、宇宙旅行は健康に何も問題がない人にも過酷な経験だ。

 新たな研究によって、宇宙に滞在した宇宙飛行士の体を調査した結果、特に重要な臓器に影響が見られるという懸念が報告された。脳である。この研究結果により、無重力状態で長期間滞在すると、地球に帰還して7カ月が経過しても、脳に影響が残りうることが明らかになった。

 2018年10月25日付けの学術誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」に発表された論文で、およそ半年間におよぶ国際宇宙ステーション(ISS)での滞在が、宇宙飛行士にどんな影響をもたらしたかが報告されている。ベルギー、アントワープ大学の科学者たちが率いる研究チームは、10人の男性宇宙飛行士のミッション前後の脳を、核磁気共鳴画像法(MRI)で撮影した。また、そのうちの7人については、ミッション終了後7カ月目にも撮影した。(参考記事:「ソユーズ打ち上げ失敗でISS滞在の飛行士どうなる?」

 これまでの研究で明らかになってきたように、宇宙に滞在すると、頭蓋骨内の脳脊髄液(脳漿、髄液ともいう)が増加すると考えられる。脳脊髄液は透明な液体で、動いたり衝撃が加わったりした際に脳のクッションのような役割をし、脳圧を正常に保つ働きもある。(参考記事:「脳の掃除は夜勤体制」

「人間は地球の重力下で立って生活するように適応しており、重力がなくなると、体内の液体はすべて頭の方に移動します」と論文の共著者でドイツ、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの教授ペーター・ツー・オイレンブルク氏は話す。論文によると、宇宙から帰った直後は、脳の「灰白質(主に神経細胞の細胞体が集まる組織)」の体積が最大で3.3%減っていた。宇宙に滞在中に、過剰な脳脊髄液が圧迫していたためと考えられる。そのときに減った分は、しばらくすると回復したものの、数カ月経つと今度は別の場所の灰白質が減っていた。宇宙に行く前と比べると、灰白質は全体で計1.2%ほど減っていた。

NATIONAL GEOGRAPHIC
日本版サイトへ

シェアする

関連する学び

あわせて読みたい記事

認知

大気汚染で認知能力が低下、年齢が高いほど顕著 男性であること、教育水準が低いことも影響強める、研究 NATIONAL GEOGRAPHIC

環境

夏の異常気象、2100年までに1.5倍に? 最新研究 熱波、洪水、干ばつ、山火事など北半球の気象災害の原因、極端気象の長期化で NATIONAL GEOGRAPHIC

宇宙

【解説】NASAの新衛星 TESS、宇宙で何を? 太陽系外で「生命のいる惑星」を探す足がかりに NATIONAL GEOGRAPHIC
記事一覧に戻る