“海洋科学のすべてを変える技術” 環境DNAに期待

わずかな量の淡水や海水から海洋生物の生息数を調べる新技術が注目されている

NATIONAL GEOGRAPHIC

文=Stephen Leahy/訳=ルーバー荒井ハンナ
PHOTOGRAPH BY NATURAL HISTORY COLLECTION/ALAMY STOCK PHOTO

京都産業大学による見どころチェック!

水中の“足跡”を追跡できるゴーフィッシュeDNAとは?

残留物からDNAを抽出し、魚の痕跡を捉える

どれだけ、何が生息するか?海洋生物のモニタリング実現へ

 川や海でコップ1杯の水をすくい取ってその環境DNA(eDNA)を調べるだけで、つい最近そこにどんな魚がいたかが分かる。以前なら種を特定するのに研究室で1カ月以上かけなければならなかったものが、新たな技術を用いれば3日以内に同様の結果が得られる。科学を大きく変えるかもしれない革新的な技術だ。環境DNAとは、生物の個体から直接採取されたDNAではなく、生物が活動をする過程で環境に落としたものに含まれるDNAのことだ。(参考記事:「ネッシーにチェックメイト! 環境DNA分析を開始」

「ニューヨーク港の水を火曜日の朝に採取すれば、木曜日の夕方までにはフユヒラメが戻ってきたかどうかが分かります」。米国ニューヨーク市にあるロックフェラー大学人間環境プログラムの責任者ジェシー・オースベル氏は言う。

 これは重要だ。というのも、ニューヨーク港では、フユヒラメが戻ると浚渫が制限されるからだ。

「ゴーフィッシュeDNA」と名付けられた新技術は、短期間で結果が得られ、しかも1種の特定にかかる費用はわずか15ドル。他の種もいっしょに調べたければ、1種につき8ドルを追加するだけだ。数年もすれば、海水浴場で早朝海水をくみ取り、数時間後にはそこにイタチザメやホホジロザメがいたかどうかを調べられるようになると、オースベル氏は期待する。「試験紙をコップに差すだけというように便利になります」(参考記事:「21世紀の生物学を支える「次世代シークエンサー」とは」

 ロックフェラー大学は2018年11月29日、30日に第1回海洋環境DNA全国会議を主催し、環境DNA技術がどのように活用され、改善されているかを話し合った。

 スタンフォード大学の海洋科学者バーバラ・ブロック氏は、「岸から1600キロ以上離れた海上で環境DNA解析を行い、その船の真下にホホジロザメがいたことを48時間で明らかにしました」と報告した。(参考記事:「ヨーロッパの農業伝播は地中海経由か」

「ゴーフィッシュeDNA」を開発したロックフェラー大学上級研究員のマーク・ストークル氏は、子ども向けのトランプ遊び「ゴーフィッシュ」にちなんでこの名をつけたという。

 魚を捕獲せずに、遺伝子の痕跡だけで種を特定できるため、「環境的にも経済的にも大きな意味を持つ画期的な技術です」と話す。

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